としくらえみさん「羊毛とおはなしの会」おはなし編<後編>
3/17(土)としくらえみさん「羊毛とおはなしの会」のとしくらえみさんのお話し後編です。
こちらはおはなしの後半です。ぜひ前編からお読みください。
としくらえみさんのおはなし後編です。
<目次>
※後半は「⑤大人ができることー「示す」「節目を支える」」から始まります。
親ができることってなんでしょうか?
「教えることよりも、生活している姿をみせること。
そして、成長の節目ポンと支えてあげる。」ことだととしくらさんは語ります。
としくらさんととしくらさんの2番目の息子さんの、こんなエピソードをお話ししてくださいました。
3才を過ぎてもついつい抱っこしてしまっていた2番目の息子さん。
ある日としくらさんのお友達の方が抱っこを求める息子さんを見て言ったそうです。
「もう3才なんだから歩きなさいよ。」
としくらさん自身もついつい二番目の息子さんなので、求められれば抱っこしてしまっていた自分に気づき、
息子さんに「もう歩こうよ。」と言ったそうです。
神社までのお散歩。
途中までは良かったでのですが、鳥居の前でついに息子さんは「絶対に歩かない!」と言って大の字になって泣き出してしまったそう。
それでもとしくらさんは「もう歩こう」と言って待ちました。
日も暮れてきます。
道を歩く人々は泣いている息子さんをかわいそうと見ています。
ついに息子さんは泣きつかれてそのまま眠ってしまいました。
しばらく経って目を覚ました息子さんは、立ち上がって言いました。
「おなかすいた、もう行こう。」
すたすたと1人で歩き始めたそうです。
「それまでは輪郭がふんわりした赤ちゃんだったのに、
後ろ姿がくっきりとした幼児になったように見えた。」ととしくらさん。
遊びも、今までの遊びから発展したそうです。
子どもの成長の節目にお母さんが支えてあげること。
お母さんが態度で示すこと。
▽としくらさんがご自身の出産や子育てを書かれた本『ちいさな子のいる場所』
『ちいさな子のいる場所』~妊娠・出産・私の家のシュタイナー教育~
それでも、つい人目があると甘くなってしまいますね。
としくらさんも、歩かないと神社の前で大の字で泣く息子さんを見て道行く人々に「あ~あんなに泣かせてかわいそう。」という目で見られたそう。
でも、「周りに気兼ねする必要はないのです。」と、としくらさん。
周りから見て良いお母さんになる必要はなく「この子にとって良い母親・人間になる」。
泣いてほしくなくて、周りの目を気にしてお菓子を渡してしまったり、
ご褒美をあげてしまったりすることを繰り返していると、
お子さんとの間にだだをこねると聞いてくれるという悪循環ができてしまいます。
そうすると幼稚園や学校にいったときに何かいいことがないということが聞けないようになってしまったり・・・
社会の中に入れなくなってしまう。
決めたら曲げない。
態度を子どもに示すのです。
そうすると子どももわかってくれます。
「ああ、お母さんはもう言ってもだめなんだ。」って。
あきらめるというわけじゃないけれど、子どももわかってくれます。
としくらえみさんと参加されたお母さんたち
子どもの意思を育てるのなら、嫌がるその気持ちも支えるべきなのでは・・・?
親が決めてしまってもいいの?とも思います。
「支える」という姿勢と「決める」という姿勢は少し矛盾するような気もします。
ですが、生きる上で大切なことは親が決めてよいのです。
「衣・食・住」は人間が生きていく上でとても大切なことです。
何を食べても良いわけではありません。
子どもはどうしても甘いお菓子が大好きだったり・・・
ですが、「衣・食・住」は
「自分の頭で考えて、自分の心を動かして、自分で行動できる人間」=大人が、
しっかり考えなければならない大切なことです。
子どもの身体をつくる大切な食事、
遊ぶためにも学ぶためにも大切な身体のことは大人が決める、これは支えることでもあると思います。
そして、大切なことを親が決めることで自分で判断ができるようになるのです。
ゲッピンゲンのシュタイナー幼稚園の遊びの環境づくり
シュタイナー教育は「リズム」をとても大切にするのだそうです。
そのリズムも大人が決めるものです。
遊びの時間が終わったら「もう帰るよ」と決める。
リズムが身体に身につくとリズムで動くことが心地よくなって自然とリズムで動けるようになるのだそうです。
そのかわり、リズムに合わせて大人も動くことが大切です。
時々パーティーとか、お出かけとか、そういうときは仕方ないのです。
毎日のリズムを作って、遊ぶ時間もちゃんと保障してあげること。
その時間の中で遊べるんだという安心感が生まれ、遊びも深まるんだそうです。
としくらさんのお家では、お兄ちゃんが中学生になった今でも毎日夕方5時に夕ご飯を食べるそうです。
そして夕ご飯のあとには毎日バイオリンの練習をするそうです。
「バイオリンを習いたい」と言ったお兄ちゃんと約束したんだそうです。
「毎日必ずさわろうね。」と。
その約束と、毎日夕ご飯の後に練習するというリズムでもう長くバイオリン、続いているそうです。
としくらえみさんの水彩画
シュタイナー教育で大切にしていることをもうひとつ。
それは「感覚」を育てることだそうです。
そしてその「感覚」は「バランス感覚」なんだそうです。
平均台にのったり、私たちはいろんなことをして子どものバランス感覚を育みます。
シュタイナー幼稚園で大縄跳びをする風景
身体的なバランス感覚はもちろんですが、
もっと大切にしていることは「人とのバランス感覚」「心のバランス感覚」だそうです。
身体のバランス感覚を育てることで、自然と人とのバランス感覚につながっていくのだそう。
「中心を意識することも大切」ととしくらさん。
そういえばこのお遊戯も中心を意識しているようにも見えます。
シュタイナー幼稚園のお遊戯の時間
シュタイナーの幼稚園でよく行われている水彩画はバランス感覚を育てるのにとてもよいのだそうです。
中心を意識したり、色のバランスを見ること、
また、表現することで心のバランスを取り戻すこともできる、そんな中でバランス感覚が育まれることだそうです。
としくらさんが見せてくださったドイツの子どもが描いた水彩画
そのバランス感覚が人との感覚の距離感を育ててくれる。
例えば、お母さんと自分の距離と、先生と自分の距離、お友達と自分の距離は違います。
大人もそうですよね。旦那さんとの距離と知らない男性との距離は違うものです。
そのバランス感覚が大きくなったときの学びにも生きていきます。
数字の世界はもちろん、仕事を生み出そうとしたときにも生きています。
水彩画や手仕事については次回のブログでまた詳しくご紹介します。
またこちらの本で、子どもの絵を描く気持ちや画材についてなど紹介されています。
としくらさんのお話しを通して「与えるのではなく支えること」を大切にされているなあ、と感じました。
ふと思い出した言葉がありました。
「子どもと一緒になにかするっていうことは蝋燭を持って薄暗い洞窟を進むこと」
アーティストの椿昇さんの言葉です。
子どもが歩こうとする道を、大人が照らすこともできます。
大人が明るい灯りを照らすことは簡単です。
でも、子どもの心に小さく灯った灯りを大きな風で消えてしまわないよう、見守りながら、
一緒に洞窟を歩くのも、素敵なことではないでしょうか。
もっとお話しを聴いていたいような素敵な時間でした。
としくらえみさん、素敵なお話・時間をありがとうございました。
「羊毛とおはなしの会」は<羊毛のハリネズミ作り編>に続きます。
お楽しみに。