としくらえみさん「羊毛とおはなしの会」おはなし編<前編>
<はじめに>
これからご紹介させていただく内容はとしくらえみさんのお話しをもとにMOMOで構成させていただき、
文章や資料など一部加筆させていただいています。
章や章のタイトルはこちらでまとめさせていただいたものです。
多少の間違いがありましたら、お許しください。
また途中登場するドイツのシュタイナー幼稚園の写真はMOMOの社長が2012年2月にドイツに行ったときに撮影したものです。
※実際のお話し中では、ドイツのシュタイナー幼稚園の写真を用いての説明はありません。
写真の注釈はMOMOで書いたものです。としくらさんの言葉ではありません。
この文章を読んでいただくことで、当日参加できなかったお客さまやシュタイナー教育に興味のある方々に、
としくらえみさんのお話が届けば、と思います。
もしとしくらえみさんがお近くで講演などをされる機会があれば、ぜひ足をお運びください。
としくらさんの生み出す空気感や、やわらかなお話しの声を実際に体験していただくことで、
もっと深く伝わります。
としくらえみさんの今後の講演会やワークショップの予定は、
としくらえみさんのホームページやFacebookをご覧ください。
●としくらえみさんのホームページ:キンダーライムなひととき
●としくらえみさんのFacebook
<目次>
※前編では「④物の成り立ちを見せる」までお送りします。
店長によるとしくらさんのご紹介からおはなしははじまりました。
としくらえみさんです。
幼稚園教諭として働いて4年が経った頃、
としくらさんは新宿の本屋さんで子安美智子さんの『魂の発見ーシュタイナー学校の芸術教育』という本と出会いました。
「普段は本を買わないで図書館で借りたりしているんだけど、この本だけはすぐに買ってしまったの。」と、としくらさん。
この本を読み、ドイツにシュタイナーの幼稚園があるということを知ったとしくらさんは、
なんと!すぐに働いていた幼稚園をやめ、ドイツに行くことを決めたのでした!
そして誰も知る人のいないドイツで、自分でシュタイナー幼稚園を探し、
飛び込みで(!)「研修をさせてください!」とお願いし、
シュタイナー幼稚園での幼児教育を体験されたとしくらさん。
ドイツのシュタイナー幼稚園での体験を書かれた本がこちらの「魂の幼児教育」です。
魂の幼児教育〜私の体験したシュタイナー幼稚園〜 (イザラ書房)
シュタイナー幼稚園を体験し感じた大きな特徴は、
子どもに「安心してほっとできる場所と時間を保障してあげること」だそう。
ドイツのシュタイナー幼稚園で先生のおはなしを聴く子どもたち
幼稚園でも大きな音で音楽がかかっていたり・・・刺激の多い毎日です。
いろんなことをやらなくちゃいけなかったり・・・
やらされるのではなく、自分でやりたいと思う心。
じっくりと落ちついて遊びを深めていく過程で子どもに自発的に「やりたいと!」思う心が生まれます。
大人はそのやりたいと思う心を手助けして、困った時に支えてあげる、
遊びを発展させるために声をかける、それが大人の役割です。
幼稚園ではなくても、
安心してほっとできる場所と時間を保障してあげることは家庭の中でもできるのではないでしょうか。
シュタイナー教育の考え方に「シュタイナー教育の七年周期」というものがあります。
シュタイナーは人生を七年ごとの周期にして考えます。
そしてそれぞれの周期で育てること、学ぶことが示されています。
▽シュタイナー教育の「七年周期」
第一周期 意思をそだてる
小さな頃からいろんなことを教えたほうが良いのかな・・・と、
情報や宣伝が溢れる世の中、文字や数字・・・早く教えなければいけないのかな、と
不安になることもあると思います。
頭を使わせてあそぶものは後でいいんです。
最初から教えてしまうと自分で何かを見つけて、やろうとして、探す、といった子どもの「意思」が失われてしまします。
子どもの「なんだろう?」「おもしろい!」という自然と芽生える気持ちが大切です。
シュタイナー幼稚園の女の子。瞳の中に深い物語が見えるようです。
第二周期 感情をそだてる
先生の教えてくれたことをおもしろいと感動し、本の内容に感動する心。
感情を使う。
数の不思議に触れたり、自分の生きている世界を知って、世界に感動する。
もっと学びたいと思う気持ちを育む時期。
デュッセルドルフのシュタイナー小学校の教室
第三周期 思考を育てる
仕組み、知識で物を考える。世界のいろいろなことを吸収する。
頭を使う。
シュタイナー幼稚園の先生用の本棚、いつまでも学びは続きます。
この成人までの三周期で「意思・感情・思考」を育てることで、
「自分の頭で考えて、自分の心を動かして、自分で行動できる人間」になることを目指します。
自分の頭で考えて、自分の心を動かして、自分で行動できる人間こそ『真に自由な人間』だと
シュタイナーは言っているのだそうです。
意思を育てるって何をすればいいのでしょう?
「意思」を育てるなんて、とても難しいことのように思います。
ですが、特別与えるものも、教えるものもありません。
その力は子どもが実際もう持っているものなのです。
たとえば赤ちゃんの成長の過程で、つかみたい・舐めたい・叩きたいと思うこと、
他の赤ちゃんが立っているのを見て自分も立ちたいと思って立ち上がること・・・
そういうひとつひとつが全て「意思」なのです。
大人が特別になにかすることはありません。
やりたいと思うことを安全に楽しくできるように大人が支えてあげるだけでいいのです。
「触りたい!」という赤ちゃんの「意思」
子どもが与えられることに慣れてしまうと自分で何をしたらいいかわからない大人になってしまう。
子どもは周りの大人が与えてくれる機会が多いので、なんとかやっていけてしまいますが、大人になるとそうはいきません。
つい周りのお子さんと比べてしまったりすると思います。
小学校に入学する前から文字が書けたり、計算ができたり・・・
でも心配することはありません。
遊べる子は好奇心を持って勉強に飛びつくことができ、学びを遊びと同じように深めていくことができます。
遊びを創りだす力は、仕事や学びを自分で工夫してつくったり解決したりする力になります。
シュタイナー幼稚園では「作りたい!」気持ちを支える材料が常備されています。
遊びを深める道具
(ヴッパッタールのシュタイナー幼稚園にはおもちゃがたくさんありました。
材料が多い園、おもちゃが多い園、シュタイナーの園もそれぞれだそうです。)
たとえば、としくらさんはお子さんが小学生になるまで文字も計算も教えなかったそうです。
でも、「すぐ追いついちゃった」ととしくらさん。
「子どもの力を信じてあげる」ことが大切だととしくらさんは語ります。
子どもはすでに意思や感情を持っています。
それは与えるものではなく、支え・育てるものです。
子どもを信じて、支えてあげることが大人のできる役目です。
としくらさんがシュタイナー幼稚園でこれはおもしろいなあと思ったのは
「物の成り立ちを見せる」ことだそうです。
完成した物が溢れ、インターネットでなんでも買える時代。
子どもたちに日常使っているものがどのようできているのか見せてあげることはとても大切なことだそうです。
シュタイナー幼稚園では、小麦を石臼でひいて粉にして、こねて焼いておやつにいただいたり、
散歩の途中で見つけたベリーを摘んできてジャムにしてパンにつけて食べたり・・・。
シュタイナー幼稚園のおやつ風景
石臼をひいたり、道になっているベリーをとってくることはおうちでは難しいですが、
おうちでお母さんがお料理をする姿を見せてあげるだけでいいのよ、ととしくらさんは言います。
毎日食べているごはんがこういうふうにできて、こういうふうにお皿にのってでてくるんだということを見ることが大切ですよ、と。
小さなことでも良いのです。
歩いているときに見つけたもので遊びの道具をつくったり。
●近くの森に遊びに行く子どもたち
●幼稚園の中には森でとってきた木の実がいっぱいのカゴが
●森で見つけた枝を早速遊びの道具にする男の子
としくらさんは織り機での編み物を紹介してくださいました。
「このままかかければお人形さんのお布団にもなるし、
ここをくくればポシェットにも。」
シュタイナー学校の売店の草木染めの毛糸/シュタイナー幼稚園の織り機/織り機 イネス(ニック社)
「円形の織り機で織った丸い布を2つつくって、とじて・・・」
シュタイナー学校の売店と、MOMOの円形織り機。
物をつくる過程には大変なこともあります。
そういう経験を通して完成したとき、「わ、できた!」という喜びがあります。
そして自分でつくったものを使う喜び。
自分で作ったと思えば愛着が湧きます。
そうすると物を大切にする心が生まれます。
ひとつつくったことで色んな気持ちが味わえます。
ただお母さんが作っている姿を見ているだけでもその体験は子どもの身体の中に入っていきます。
自分が生きる世界にあるものすべてに成り立ちがある。
自分で材料から作ってみることで、わかることがあります。
この経験が大きくなったとき、大人になったとき、学びや仕事にも役立つのです。
としくらさんの本「キンダーライムなひととき」では、
織り機での編み物から、
野原で摘んだたんぽぽで羊毛を染めたり、きびだんごをつくったり・・・
素敵な写真でとしくららえみさんと息子さんたちの時間が紹介されています。
後編に続きます。
後編は「⑤大人にできることー「示す」「節目で支える」」からお送りいたします。
☆店長がこの会の感想を書いています。こちらの店長ブログをご覧ください。